売主優位な不動産業界の現状
不動業者は物件を販売することが目的
不動産を売買する場合、売り手側にも買い手側にも担当の仲介会社が付きます。売り手側の仲介会社は「元付仲介」買い手側の仲介会社は「客付仲介」と呼ばれます。また、一つの事業者が「元付仲介」「客付仲介」の両方を行うこともできます。このことを「両手仲介」と言います。
不動産仲介会社の収入は成約金額に応じた仲介手数料です。従って不動産仲介会社は1円でも高い物件を成約したいと考えます。
ここで一つ矛盾が生じます。売主は1円でも高く売りたいので、売主と「元付仲介」の利害は一致します。しかし、買主は1円でも安く買いたいので、買主と「客付仲介」の利害は一致しないのです。本来であれば買主の味方であるべき「客付仲介」が売主側の立場に立ってしまい、買主の利益を追求する役割が不在なのが現在の不動産市場です。
買主への情報遮断で成り立つ不動産市場
不動産取引に関する知識については消費者である買主よりも仲介会社の方が豊富に持っています。また、消費者では知り得ない情報でも仲介会社なら調査が可能な場合もあります。消費者とプロでは持っている情報に差があるのです。買い手側の「客付仲介」に求められる資質は何より徹底した情報開示であるべきです。
ところが、この情報ギャップを逆手にとって、買主への情報遮断が行われているのが現在の不動産市場です。例えばとある仲介会社がいくつかの物件の「元付仲介」だったとします。そこに家を買いたい消費者が来店します。一般的な不動産会社はまずは「元付仲介」の物件を勧めます。続いて業者が売りたい物件を勧めてきます。悪質な場合は違法建築など明らかに買主にとって不利益な物件であっても「おすすめ物件」「掘り出し物」といって勧めてくるのです。「客付仲介」なのに物件を売る姿勢なので、取引に影響しそうなネガティブ情報の提供は極力避けようとします。このような状況で一般の消費者が公平に取引ができるのでしょうか。
ハザードマップを確認しましょう
多くの不動産事業者は「地域密着」をPRしています。地元に精通していることはとても頼もしいことですが、その地元が「津波」「液状化」「洪水」など、自治体からハザードマップも公開され災害リスクを抱えているところだったら・・・
そのような自然災害リスクを購入予定者にしっかり伝達したら、その地元の不動産を購入する人は、もしかしたらいなくなってしまうかもしれません。宅地建物取引業法において、自然災害リスクを告知することは義務ではありません。多くの不動産仲介事業者は、対象物件に関する自然災害リスクについて、告知してくれません。
エージェント型仲介の当社では、そのようなリスクこそ、購入予定者に告知すべきであると考えます。当社でお手伝いさせていただくときはもちろん、調査して告知いたしますが、ご自身で探される時も物件購入検討時には、ハザードマップの確認を強くお勧めいたします。(国交省ハザードマップポータルサイト:http://disaportal.gsi.go.jp/)
利益相反「両手仲介」が横行する市場
一つの事業者が「元付仲介」「客付仲介」の両方を行うことを「両手仲介」と呼びます。不動産会社は「両手」で取引をまとめると、売主と買主双方から仲介手数料収入が得られます。一つの取引で収益が2倍です。一般的な不動産会社がまずは「元付仲介」の物件を勧めるのは「両手仲介」にしたいからに過ぎません。買主の意向や利益はまったく考慮されていないのです。
売主は1円でも高く売りたいと考えます。またなるべく早く売りたいと考えます。一方買主は1円でも安く買いたいと考えます。またじっくり選びたいと考えます。このように売主と買主の利益は相反関係にあり、「両手仲介」を行う不動産会社は矛盾している立場にいることになります。しかし、今の不動産市場は「両手仲介」が当たり前です。大手仲介会社の平均仲介手数料率は5%を超えています。買主もしくは売主から得られる仲介手数料は3%+6万円と法律で制限されているので、いかに「両手仲介」が横行しているか、不動産市場には物件を売りたい人しかおらず、買主が不利な状況であることがご理解いただけると思います。